xR関連の覚え書き
VR (Virtual Reality: 仮想現実) 、AR (Augument Reality: 拡張現実) 、MR (Mixed Reality: 複合現実) 、そしてそれらを総称して xR (xReality: xは未知数を表す) と呼ばれていますが、一部では積極的に活用されているものの、普及段階まではもう少しという印象。
デバイス待ちなのか、コンテンツ待ちなのか、もう少し別な角度からの技術が必要なのか、あとどれくらい時間が必要なんでしょうね。
普及すれば、スマートフォンが登場した時くらいに、人々の生活を変えてしまうインパクトがありそうなので期待はしているところです。
普及段階までぼーっと待っているだけというのもなんなので、2019年の締めくくりというわけでもありませんが、現時点で、私の業界、デザインの現場で知っておくと良さそうな情報を少しだけ、覚え書き程度にまとめてみました。
Adobe Aero
デザインツールとして外せないソフトウェアを提供するAdobeからは、Project Aeroというベータ版を経て登場したのが「Adobe Aero (アドビ・エアロ)」
主にビュアーとして機能するアプリです。
ベータ版の段階で参加して使わせてもらっていましたが、初期段階では現実空間に3Dや2Dオブジェクトを配置して眺めるだけといった印象でした。
これではなぁ、、という段階が続いていたものの、正式リリース直前からリリース時には、アニメーションやそれを起動するためのトリガー設定なども加わりそこそこという感じに。
今のところiOS用アプリのみのリリースですが、一度試してみられると良いと思います。
また、Adobeからは、3D、AR関連ポスト用のInstagramアカウントが公開されていますので、こちらもフォローしておくと最新の情報が入手できそうです。
・Adobe 3D & AR(@adobe3dar) • Instagram写真と動画
ちなみに、もう少し実用的なビュアーだと、組み立て家具を扱う「IKEA」からもiOSやAndroid用に「IKEA Place」というアプリがリリースされていて、販売されている家具を自宅の部屋の空間へ配置した場合のシミュレーションが可能です。
mixamo
3Dキャラクターに対してボーン(骨組み)構造を設定できる「mixamo(ミキサモ)」。
人型の3Dオブジェクトに特化してますが、動作付けを担うソフトウェアです。
CG制作をされている方ならお判りかと思いますが、制作した3Dキャラクターにボーンを仕込んだり、各部位にそれなりのウェイトを設定したりというのはとても骨の折れる作業(ボーンだけに)なのですが、それを数カ所の部位設定でサクッと終えることができるというものです。
2015年にAdobeに買収されたWebサービスで、AdobeCCのアカウントがあれば利用できます。
高度なスキルが必要ないのはもちろん、色々なポーズやアニメーションなども沢山のデータがあり、簡単に設定可能。
そして、Adobeが提供するサービスだけあって、アニメーション付けしたデータをCreative Cloudへ直接送ることもでき、それを先に紹介した「Adobe Aero」へインポートして利用することができます。
下の例は、mixamoで用意されているキャラクターに既存のアニメーションを適用してCreative Cloudへエクスポート、それをAdobe Aeroへインポートした後、iOSのSafariでAR Quick Look可能なフォーマット(.usdg)に書き出してこのサイトに貼りつけたものです。
iPhoneまたはiPadでこのサイトにアクセスして上の画像をタップでビュアーが開くので、空間の平面を認識できるようデバイスを上下左右に動かしていると、キャラクターが現れて動き出します。
キャラクターに設定されたテクスチャーが複雑すぎるためか、砂嵐のような表面テクスチャーで表示されてしまいますが、雰囲気はわかって頂けるかと。
この辺りは色々と検証してみる必要がありそうです。
次のリンク先は、Appleが用意したサンプル集ですが、オブジェクト表示や実際のサイトでの利用例なども体験できます。
blender
「blender (ブレンダー)」は、古くからCG業界で使われているオープンソースなソフトウェアで、モデリングはもちろんのこと、mixamoよりの高度にリギングやアニメーションを設定できたり、レンダリング、合成、シミュレーション、モーショントラッキング、さらにはビデオ編集などにも対応したオールインワンタイプの3Dソフトウェア。
ユーザーが非常の多く、大手のCGプロダクションで利用されてもいたり、機能強化されたバージョンアップもリリースされ続けています。関連書籍も豊富ですし、困った時のWebでの情報検索にも困らないと思います。
最近のアップデートでは、Grease Pencilというのが追加されて、手書きのストロークを3D空間に配置、それをオニオンスキンを使ってアニメーションさせるというのが話題になっていました。
高機能なだけに、起動後に見るインターフェイスはやや難解に見えますが、機能を絞り込んで使うとそれでもないかと。
モデリングやレンダリング関連では、Adobeから「Adobe Dimension」というソフトウェアもリリースされていますが、こちらはかなり昔にリリースされていたAdobe Dimensions (Adobe Illustratorに同梱されていた時期もあった) とは違い、モデリング機能がなくなっているようで、主に3Dオブジェクトやテクスチャマッピング用の2D画像をインポートしてレンダリングする用途に特化しているようです。
AR Kit
iOSのAR開発に重要なのがAppleの「ARKit (エイ・アール・キット)」 (拡張現実開発フレームワーク)。
こちらはエンジニアさんよりのドキュメントですが、どういうことが実現可能なのかくらいは把握しておくと良さそうです。
iOS 11と同時にリリースされて、現在は「ARKit 3」となり、人物を認識したピープルオクルージョン機能 (ARコンテンツが現実空間に実在する人の前や背後を通り過ぎるといったことを実現可能) や複数人 (現段階では同時に最大3人) の顔認識なども追加されて精力的にアップデートされている様子。
iPad用にリリースされている「Swift Playgrounds」でも、AR Createを追加するとARコンテンツを作成できるので、こちらも少し参考にしても良いかも知れません。
まだそう少し何かありそうですが、長くなりそうなので、今回はひとまずこの辺りまでにしておきます。
まだまだこれからの技術なので、実際の仕事として取り組むのはもう少し先かもですが、研究段階のプロジェクトなどでも、お声がけ頂ければ一緒に課題解決などのお手伝いができるかも知れませんので、デザイン面での課題などがありましたら一度お問い合わせください。
おそらくこれが2019年最後のエントリーになると思いますが、皆さん良いお年をお迎えください。
そして来年もどうぞよろしくお願いいたします。